2013年11月1日金曜日

34.あの星はお父ちゃん

 父がなくなったのは、5才の頃でしたので、おそらくなくなった昭和21年の
春か秋のことと思います。

 ある晴れた夜、母に連れられて歩いて5分ほどの銭湯に行く途中、
母が空を見上げて、ある星を指して「あの星はお父ちゃんやよ」と言いました。

 (家の風呂は昭和22年小学校へ入学後、薪を焚く五右衛門風呂ができました)

 そのあと母が何を言ったかは覚えていませんが、おそらく「見守ってくれて
いるんよ」のような意味の事を言ったのでしょうか。

 成人後、本やドラマなどで、登場人物が星を見上げて「あれはお父さんよ」とか
 「あれはお母さんよ」などと言うような場面を読んだり見たりしましたが、
なんとなく陳腐な言葉のような気がして、あまり心が動きませんでした。

 しかし、73才になった今、夜空にぽつんとひとつだけ星が見えるようなときは、
あの星は本当に父か父の魂かも知れないと思うようになりました。

 母が言ったのは、私を慰める目的だけでなく、母自身が自分に言い聞かせて、
寂しさを打ち払う言葉だったような気がします。
その母の気持を想像すると・・・・ (母は2002年12月なくなりました)


 直接関係はありませんが、人は木像や石像に魂を吹き込むように、
星にも月にも心を送り込むのでしょう。

 道端の石地蔵なども、それを作り、守ってきた人々の心が宿っているので、
決してただの石ではないのですね。